PPA:無形資産評価/のれんの実務が分かる書籍4選

FAS実務

近年、日本においてもM&Aの数は増加しています。また、ディールサイズが小さい案件であっても、取得価額の配分(Purchase Price Allocation:PPA)が求められるケースというのは増えてきています。これは一重に、目的が不明瞭なM&Aを是正するためであり、株主への説明やガバナンスというところが重要視されてきているからだと理解しています。

これまで専門家のみが理解していれば良かったPPAですが、徐々に事業会社の経理部門や事業部門においても、PPAによるインパクトを把握した上でのM&A実施の必要性というのが問われてきているように感じています。

そこで今回は、PPAに関与またはそのインパクトを把握しておく必要がある方向けに、PPA実務で利用される書籍を紹介していきたいと思います。

PPA関連のオススメ書籍3選

M&A無形資産評価の実務

読みやすさ:★★☆☆☆
オススメ度:★★★★★

BIG4 FASのPPA実務にてよく利用されている書籍の1つです。PPA実務に従事している人で持っていない人はまずいない、そのくらい重宝されている書籍です。デロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー合同会社のメンバーによって書かれており、実務でふと疑問に思ったことについて、解決の糸口を見つけることができます。

無形資産評価の実務とありますが、在庫のステップアップや有形固定資産の評価実務に関する内容についても触れられており、PPA実務を網羅する内容となっています。専門書であるため決して読みやすい内容ではありませんが、PPA実務に従事するに際してまず何を買えば良い?と問われれば真っ先にオススメする書籍です!

2021年8月頃より本書第三版が手に入りにくい状況となり、高額で取引されていました。もう新版の発売はないのかと思っていましたが、幸いにも2023年10月下旬に上記第四版が発売されました。但し、第四版についてもあまり刷られないように思いますので、関心のある方は定価で購入できる間に買っておくことをオススメします。

M&AにおけるPPAの実務

読みやすさ:★★★☆☆
オススメ度:★★★★☆

こちらもデロイトの書籍と同様PPA実務者に重宝されている書籍です。EY Japanによって執筆されており、デロイトの書籍と微妙に論点の取扱いや強調されているポイントが異なるため、両方持っている方が多い印象です。中身にひと通り目を通すという観点だとこちらのEYの書籍の方が読み進めやすく、実務でゴリゴリ使うというよりは内容に目を通しておきたいという方にはこちらをオススメしています。

実務者の視点から本書の難点を1つ挙げておくとすると、後ろに「索引」がないことです(EY書籍はないことが多いです)。なので、キーワードから論点を辿ろうとしてもそれができないため、PPAの全体像を把握していないと使いづらいのです。そのため、私が持っている本書はデロイトの書籍に比べて大量のふせんが貼られており、過去の自分のおかげで使いこなせているというそんな状況になっています。そうした理由から、実務面でのオススメ度は★4という評価にしています。

PPAの評価 無形資産・動産の基礎から実務まで

読みやすさ:★★★☆☆
オススメ度:★★★★★

本書は、2021年10月10日に初版発行されたPPA書籍です。本書の特徴は、次の2つだと認識しています。

1つは、PPAの評価実務においてつまずきがちなポイントや「あれ?こういう場合ってどうしたら良いんだろ?」という論点について触れてくれていることです。例えば、超過収益法での顧客関連資産の評価に係るページでは、顧客減少率の期央調整や顧客減少率の測定期間について触れられている等です。概論的に淡々と解説文書が並んでいるわけではなく、上記のような重要論点に係る記載が散りばめられているため、PPA書籍としては読みやすい部類に入ると認識しています。

もう1つは、動産評価に関して詳しく解説されていることです。上で紹介した2冊では、無形資産の価値評価に関する部分に多くのページが割かれており、動産評価に関する記載については非常にライトです。そういった意味で、PPA実務における動産評価に関して詳細が解説されている書籍は本書が唯一だと認識しています。

余談ですが、著者の一人であるインダストリアル・バリュエーション株式会社の金子氏は動産評価の専門家として業界では有名です。私も同社の評価書を拝見したことがありますが、緻密なロジックで評価を実施されていて非常に勉強になったと記憶しています。

評価の実務担当者はもちろん、事業会社の経理・財務担当者必携の書籍です。本書を手元に置いて専門家とのミーティングに臨まれると、生産的なディスカッションができると思います!

そこが知りたい!「のれん」の会計実務

読みやすさ:★★★☆☆
オススメ度:★★★☆☆

こちらは無形資産価値評価というよりは、PPAの結果として残るのれんの取扱い(減損テストや会計処理等)にフォーカスした書籍です。適宜関連する会計基準を記載してくれているので、必要に応じて基準も参照しながら実務を進めることが可能です。事業会社の経理の方やM&A関連部門に在籍される方はご一読されることをオススメします。PPA実務者に必携かと問われると、どちらでも良いというのが個人的な感想ですが、上で紹介した2冊と合わせて読み進めるとアドバイザリー業務の質は確実に向上します。PPAのデリバリー時以外にも、会計系ファームということでクライアントよりディールの会計処理に関する質問が飛んでくることがあります。なので、FAやバリュエーション業務に従事する方はサラッと見ておくと良いかもしれません。

PPA実務者が読んでおきたい無料ソース

無形資産の評価実務 -M&A会計における評価とPPA業務-

こちらは2016年6月に「日本公認会計士協会」より公表された研究報告資料で、PPA実務上の留意点や評価手法の実例が示されているガイドラインにあたると考えて良いでしょう。実務者ならば目を通しておきたい資料になります。特に実例はモデル上の評価イメージが湧くので見ておくと良いと思います。

以下のボタンより対象ページを開くことが可能です。

THE VALUATION OF CUSTOMER-RELATED ASSETS

「THE VALUATION OF CUSTOMER-RELATED ASSETS」は、2016年6月に「The Appraisal Foundation Boards」より公表された顧客関連資産の評価に係るガイドラインです。超過収益法における減衰率の考え方は非常に参考になります。英語で記載されているため読むハードルは高いですが、例示もあるのでPPA実務者は必ず内容を押さえておきましょう。

以下のボタンより対象ページを開くことが可能です。

まとめ

PPAプロセスの中で実施される無形資産価値評価は、通常のディールでおこなわれるバリュエーションとは異なります。したがって、金融機関等では取り扱わない特殊な評価業務であり、M&Aアドバイザリーファーム(FAS)やそこから派生したファームがメインに手掛ける業務となっています。その中でもPPA業務従事者は限られており、それ故PPA実務に関する情報は非常に少ないのが現状です。特殊業務で難易度が高いため、ナレッジが属人化しており、PPA実務者の間でもかなりレベルに差があるように思います。

ただ何れにせよ、当記事で紹介したような書籍や資料が実務のベースとなることは間違いなく、PPA実務者はそれにプラスして実務経験をひたすら積んでいくことで、ある程度自立した公正価値評価人を目指す必要があります。

また、PPAの評価業務自体はしないが評価書を見るという事業会社サイドの方も、評価人に対して、ビジネス情報提供等PPAのサポートをおこなう必要が必ずあります。クライアントの担当者が非協力的な案件は、監査がなかなか通らずに、クライアントも監査人も評価人も疲弊するという誰もハッピーにならない結果を生むこととなります。それを避けるためにも、事業会社で評価人とやり取りをされる方は、上記の書籍や資料にざっくりでも目を通しておかれることをオススメします。

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みやび
みやび

そもそもPPAって何?という方は以下の記事をご参照ください!

以上です!

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