FAS転職希望者必見:BIG4 FAS部門別のスキルとキャリア

転職/キャリア

BIG4 M&Aアドバイザリーファーム(FAS)にジョインした場合どんなキャリアを歩めるのか?という質問をされる方がいますが、BIG4 FASが提供するサービスは多岐に渡るため、どの部門に所属するかによって身につくスキルやその後のキャリアが変わってきます。そのため、FASにジョインすること自体よりも、どの部門に所属するかがキャリア等を考える上では重要となってきます。

私は所属部門あるいは一緒に仕事をしたことのある部門以外について、多くの情報を持っているわけではありませんが、自身が把握している範囲で業務内容やスキル、キャリアについて書いてみたいと思います。

FAS部門別のスキルとキャリア

最近ではM&A分野においてもテクノロジーを活用しようということでデジタル系のチームを保有するファームもありますが、当記事では従来からある以下の部門について書いていきたいと思います。

  • ストラテジー
  • フィナンシャル・アドバイザリー(FA)
  • バリュエーション
  • 財務デューディリジェンス(FDD)
  • 事業再生
  • フォレンジック

ストラテジー

BIG4 FASのストラテジー部門では、M&A戦略策定支援、投資先選定支援、ビジネスデューディリジェンス(BDD)、投資基準策定、モニタリング支援等を手掛けています。収益の源泉となっているのはBDDという印象がありますが、基本的に戦略コンサルティングファームの領域とかぶってきます。FASは会計系ファームであり、ストラテジーサービスを起源として設立されたファームではないため、ストラテジー領域における知名度という意味では戦略ファームに劣ると認識しています。そのため受注も容易ではなく、同一グループ内のコンサルティングファームにて保有するストラテジーチームに仕事を取られているケースも見受けられます。

メンバーとしては日系の戦略ファーム出身者や総合系コンサルティングファーム戦略部隊出身者等が在籍しており、スタッフにとってはナレッジが吸収できる環境であると認識しています。得られるスキルは基本的に戦略系コンサルティングファームで得られるものと類似しており、BDDにおける外部環境や内部環境に関するリサーチ能力や計画策定(主にトップライン)能力等が身につくと認識しています。FASでのストラテジー部門経験後のキャリアとして最も多いのは事業会社への転職であり、M&A部門や経営企画部門へ進まれる方が多いようです。

働き方についても簡単に触れておくと、報告会直前はおそらくチーム全員ほぼ徹夜なんだろうなというレベルで深夜~早朝もメールが飛び交っています。受注がない時は当たり前ですがとても暇で、案件が取れると突然高稼働となるジェットコースターのような働き方となります。

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フィナンシャル・アドバイザリー

FA部門は、主にM&Aの実行フェーズ(エグゼキューション)において各種アドバイザーや利害関係者の調整、価格交渉等をおこなうことでディール全体を進める役割を担います。会計・税務・ファイナンス・リーガル等について広く把握しておく必要があり、総合力が求められます。業務内容は金融機関の投資銀行部門とかぶってきますが、取り扱うディールサイズが異なるため、コンペでバチバチ戦うことはそんなに多くないと認識しています。一方、安価でFA案件を受注できる独立系ファームに価格で負ける事象も近年は確認されており、そちらとのパイの取り合いとなることが予想されます。このように競合もおり、クライアントサイドでFAロールを担うケースも出てきているため、利益獲得のボラティリティは高めです。

FA部門にジョインする方のバックグラウンドはバラバラで、金融機関、監査法人、コンサルティングファーム出身等が在籍しています。身につくスキルは、他部門のような特定の領域に尖ったテクニカルスキルというよりは、各方面における総合的なナレッジと、キーマンや論点を押さえながらディールを進める調整・交渉スキルとなります。盤をひっくり返されないように駒を進める、緊張感のある交渉ゲームを楽しめる人には向いていると思います。その後のキャリアとしては、ミドル~ラージキャップのプライベートエクイティ(PE)ファンドや事業会社、金融機関等が挙げられます。

働き方は、案件受注がない時は暇ですがあまりそういったことはなく、常時何らかの案件に関与しているという状況になります。複数案件への関与が基本となるため、同時期にディールが走ると睡眠時間がかなり削られます。また、クライアントからの無茶振りにもタイムリーに対応していかなければならないため、自分のペースを守りたいという人には厳しい働き方となります。基本的に時間を問わず各所から連絡があるため、会社携帯の幻聴が聞こえるようになります。

バリュエーション

バリュエーション部門では、ディールにおけるバリュエーションやポストディールの会計目的バリュエーション、評価周りの監査サポート、財務モデリング等を担います。業務領域はプルータス等独立系の評価会社とバッティングしますが、アウトプットクオリティの高さとファームのブランド力によって、ある程度安定的な案件獲得を実現している部門であると理解しています。また、評価周りの監査サポートはグループ内の監査法人がFASに対して発注する案件となり競合が存在しないため、安定的な収益基盤となっています。

在籍者の中で最も多いのは監査法人出身者であると認識しており、ディール目的以外のバリュエーション業務については監査的な考え方や会計知識が一定程度必要となります。得られるスキルは、ディスカウンテッドキャッシュフロー(DCF)法をはじめとするディール目的バリュエーションスキル、無形資産価値評価等の公正価値評価スキル、その他モデリングスキルとなります。監査法人出身の会計士が多いということもあり、ポストFASのキャリアとして独立される方が多いと認識しています。

バリュエーション部門は1件当たり500万円以下の案件を積み上げて利益を得ていくスタイルなので、どうしても一人当たりの関与案件数が多くなります。一方で、ディール目的バリュエーション以外はある程度コントロールが効くため、上手に仕事をすればプライベートとのバランスが取れる部門だと認識しています。

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財務デューディリジェンス

FDD部門は、その名の通りM&AエグゼキューションにおいてFDD業務を提供する部門です。FDDは買収監査とも呼ばれており、その手続きは監査と類似しています。FDD業務における主な目的は対象会社の実態貸借対照表の作成や正常収益力の把握となります。FDDを提供しているファームはBIG4 FAS以外にも存在しますが、ラージキャップディールのFDDはFASで受注しているケースが多く、安定的な受注が可能であると認識しています。一方で、監査法人のアドバイザリー部門においてもFDDを手掛けるチームが存在するために仲間内で競合しているファームもあります。

上述の通り監査と類似した手続きをベースに進める業務であるため、監査法人出身者が圧倒的に多い部門です。近年は事業会社出身の米国公認会計士(USCPA)等採用対象が広がりつつあると認識していますが、文化としては会計士文化が色濃く残る部門です。得られるスキルは、テクニカル面では監査と類似したスキルがメインとなりますが、短期間で重要論点を押さえたアウトプットを出す必要があるため、監査よりも高度なコミュニケーション能力や調整能力が必要となります。ポストFASキャリアとしては特定の業種に偏っているというよりは、独立系FASや監査法人、PEファンド等特比較的バラバラであり、退職者の割合はFASの中では低い部類に入ると認識しています。女性比率も高い印象を持っており、ライフイベントに対応しつつ割と長く働ける部門であると認識しています。

働き方としては、FDD業務提供期間中は長時間労働がデフォルトになります。複数のDDを回しているスタッフは深夜まで対応されていますが、バリュエーションと同様「数字をはじく」という明確なゴールがあるため、重要論点の抽出とスケジューリングを間違わなければ、忙しいなりにもある程度コントロールが可能であると認識しています。そのため、プライベートとのバランスも取りつつ対応されている方が多い印象です。

事業再生

事業再生部門は、BDDとFDD、それを基にした事業計画策定、再生目的のバリューアップ支援等を手掛ける部門になります。提供するサービスは盛りだくさんですが、他部門と比較して対象となるクライアントはスモールキャップが中心となります。FAと同様に総合的なスキルが要求される部門であり、各種DDに関連するスキルが得られるだけでなく、事業計画策定時には財務モデリングスキルも鍛えられます。第二会社方式で切り出した事業を売却する際にFAとして活躍するケースもあるようです。よって、「バリュエーション」以外のスキルは幅広く得られる環境であると認識しています。受注の安定性等は把握できていませんが、暇だという話は聞いたことがなく一緒に仕事をすると割といつでもレスポンスがあるので、小粒だが多くの案件が走っていて収益基盤としては安定していると推察しています。

BIG4 FASでの業務経験後は独立の他、事業会社、独立系FAS、スモールキャップのPEファンドへの転職が多いと認識しています。小さいクライアントが対象であることと、総合的なスキルが身につくため、独立のハードルが他部門と比較すると低いようです。

働き方については、案件の性質にもよるでしょうが、資金繰りがギリギリのような法人がクライアントということもあり得るでしょうから、基本的にはFA部門と同様にクライアント都合で動くことになると認識しています。報告前は徹夜覚悟の作業量をこなすことが必要となり、体力的に厳しい生活になると理解しています。

フォレンジック

フォレンジック部門は不正会計調査をおこなう部門であり、不正会計等が発覚した際にその手口や原因を究明する部門になります。プレイヤーがまだ少ない分野ということもあり、各ファームともフォレンジック部門での収益を伸ばしてきていると理解しています。近年会社の会計関連業務は紙ベースではなくシステムベースで行われており、デジタル×会計のスキルが得られる希少な部門です。監査手続きを基本とし、そこにデジタルの要素を加えていくことで業務遂行していると理解しており、監査法人出身でIT監査等を経験された方が多くジョインされているようです。

FDD部門と同様比較的長く働く方が多い印象を持っており、転職先としてはリスク系のコンサルティングファームやサイバーセキュリティ系の事業会社等が挙げられます。

働き方については情報を持っていませんが、他部門との比較における離職率の低さを考慮すると、プライベートとのバランスはFASの中では取りやすい部類に入るのだろうと推察しています。

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まとめ

以上、BIG4 FASにおける6つの主な部門について紹介しました。それぞれ身につくスキルが異なること、ポストFASのキャリアが異なることはご理解いただけたと思います。よって、「とりあえず」BIG4 FASへというのはオススメしません。やりたいことや関心のあること、あるいはその後のキャリアを明確にした上でジョインされるべきと考えます。

軸の切り方がどうかという話はあると思いますが、各部門の専門領域を簡便的に可視化した以下の図も意思決定に役立てていただけると幸いです。

みやび
みやび

他にもFASのキャリアに関する記事を書いています。
関心があれば参考にしてみてください!

以上です!

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