当記事ではラージキャップのプライベートエクイティ(PE)ファンドについて各社の概要をまとめています。ラージキャップの定義とカオスマップの作成前提については以下の記事をご参照ください。
PEファンド:ラージキャップ
外資系
MBKパートナーズ
MBKパートナーズは、米系PEファンドであるカーライル・グループ出身者によって2005年に設立された韓国系のPEファンドです。中国、韓国、日本を中心に投資をおこなっており、2013年2月に「コメダホールディングス」、2019年6月に「ゴディバ・ジャパン」を買収する等日本においてもそのプレゼンスを発揮しています。その他、会計ソフトの「弥生」や「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」にも出資しています。
カーライル・グループ
カーライル・グループは米国で1987年に設立されたPEファンドであり、グローバルで20兆円を超える資産を運用している世界最大規模の投資ファンドです。日本には2000年に進出しており、2019年1月には野村キャピタル・パートナーズと共同で「オリオンビール」に対するTOBを成立させて話題となりました。その他にもベビースターラーメンでお馴染みの「おやつカンパニー」やもやしやカット野菜で有名な「名水美人ファクトリー」(2020年3月にEXIT)に出資をしています。
KKR (Kohlberg Kravis Roberts)
KKRは1976年米国にて創業されたPEファンドであり、カーライル同様20兆円を超える規模の資産を運用する世界最大規模の投資ファンドです。日本においては2006年に東京オフィスを開設し、直近では2021年3月1日に楽天DXソリューションと共同で、ウォルマートから「西友」株式を取得しました(KKRは65%取得)。
CVCキャピタル・パートナーズ
CVCキャピタル・パートナーズは1981年に設立された世界最大規模の欧州系投資ファンドです。日本における投資については、2003年に設立したCVCアジア・パシフィック・ジャパン株式会社を通じておこなっており、2006年には、バーミヤンやガストを運営する「すかいらーく」のMBOに野村プリンシパル・ファイナンス株式会社(現野村キャピタル・パートナーズ)と共同で参加しました(CVCは35.6%取得)。また、2017年12月には低価格のリラクゼーション業を展開する「りらく」株式の過半数を取得する等サービス業への投資も多いファンドであることが伺えます。
ブラックストーン・グループ
ブラックストーン・グループは1985年に米国で設立され、カーライル・グループ及びKKRと肩を並べる巨大投資ファンドです。PEファンドのみならず不動産投資ファンド業務やM&Aアドバイザリー業務も展開しており、世界最大規模のオルタナティブ投資会社として位置づけられています。日本拠点については2007年に開設し、2019年4月に鎮痛剤カロナールを主力製品とする「あゆみ製薬」の全株式を取得しています。また、直近では2021年3月25日に近鉄グループホールディングスが保有するホテルを取得することで基本合意をしたとの発表がありました。
ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア
ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアは1997年に設立されたアジア最大規模の投資ファンドです(本社は香港)。運用資産は1兆円を超え、アジアの中堅企業を中心に投資を実施しています。日本においては2019年3月にカーナビ等車載用機器の製造販売を手掛ける「パイオニア」の全株式を取得しています。
ベインキャピタル
ベインキャピタルは、1984年に戦略系コンサルティングファームであるベイン・アンド・カンパニーのメンバーにより設立された米国の投資ファンドです。ベイン・アンド・カンパニーとは資本関係等はなく、コンサルティングファームとは独立運営されています。日本の拠点であるベインキャピタル・プライベート・エクイティ・ジャパンは2006年に設立され、ドミノ・ピザジャパンやワークスアプリケーションHR事業への投資等日本における投資実績が多いPEファンドです。また、2020年9月にデロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー合同会社がフィナンシャルアドバイザー(FA)を務めたキリン堂のMBOに関与したのもベインキャピタルでした。
ペルミラ
ペルミラは1985年にシュローダー・ベンチャーズとして設立され、2001年に現在の名称となった欧州最大手の投資ファンドです。グローバルでは2014年、日本でも人気の英国シューズブランド「ドクターマーチン」に投資しています。日本においては2005年に東京にオフィスを設立し、「あきんどスシロー」(2017年にEXIT)やオーガニック化粧品を取り扱う「ジョンマスターオーガニック」への投資を手掛けています。
独立系
インテグラル
インテグラルは、独立系のM&Aアドバイザリーファーム(FAS)であるGCAの創業者2名を中心に2007年に設立された独立系PEファンドです。第一号ファンドでは、不動産賃貸の「アパマンショップ」の第三者割当増資を引受け、EXITで28億円の売却益を得ています。その他国内3位の航空会社「スカイマーク」、育毛やかつらで有名な「アデランス」、レディースアパレルの「イトキン」、直近では2021年1月にブライダルジュエリー販売を手掛ける「PRIMO」に投資しており、国内のメジャーな企業への投資をおこなっています。
日本産業パートナーズ
日本産業パートナーズは、2002年にみずほ証券、戦略系コンサルのベイン、NTTデータによる共同出資によって設立されたみずほ系のファンドで、2014年に独立しました。事業再編の支援を目的として設立された背景もあって大企業のカーブアウト案件が多く、日本電気株式会社(NEC)のISP事業を担う「NECビッグローブ」、ソニーのPC事業を担う「VAIO」、オリンパスの映像事業を担う「OMデジタルソリューションズ」のカーブアウト案件等において投資を実施しています。
ポラリス・キャピタル・グループ
ポラリス・キャピタル・グループは2004年に設立され、みずほグループから独立した独立系投資ファンドです。これまでにチーズタルト専門店「BAKE」、大人の紅茶等飲料製品の製造販売を手掛ける「エルビー」、人工骨等整形外科製品メーカーである「アイメディック」(2019年5月にEXIT)へ投資する等多くの国内案件を取り扱っています。直近では、2020年3月に医療経営のコンサルティングや調剤薬局運営等を手掛ける「総合メディカル」のMBOに関与しています。
ユニゾン・キャピタル
ユニゾン・キャピタルは、1998年に外資系金融機関ゴールドマン・サックス出身者によって設立された独立系PEファンドです。ヘルスケア、コンシューマー、B-to-Bの業種に属する中堅企業を対象として投資を実施しており、お好み焼き「いっきゅうさん」でお馴染みの「ダイナミクス」、ジェネリック医薬品メーカーの「共和薬品工業」等に出資しています。また、2017年5月には「地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)」を設立し、ヘルスケア分野における経営支援に継続的に取り組んでいます。
ロングリーチグループ
ロングリーチグループは2003年に設立された独立系PEファンドで、事業再編におけるカーブアウトと事業承継の2軸をテーマに、企業価値100~300億円の企業への投資をおこなっています。投資実績としては、上島珈琲等を運営するUCCフードサービスシステムズ株式会社からの「珈琲館」事業の譲受やカフェ・ベローチェでお馴染みの「シャノアール」の株式取得等があります。ロングリーチグループが投資する上記2社は、2021年4月1日付で合併し、珈琲館を存続会社として「C-United」に社名変更するとのことです。
ティーキャピタルパートナーズ
ティーキャピタルパートナーズは、1991年に東京海上グループ傘下で東京海上キャピタルとして設立され、2019年10月にMBOによって東京海上グループより独立した独立系PEファンドです。事業承継やカーブアウトを中心に手掛けており、コンビニやスーパーにチルドスイーツを供給する「ロピア」や仮設トイレ等の資材レンタル・販売を手掛ける「旭ハウス工業」に投資をしています。
金融機関系
ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ
ジャパン・インダストリアル・ソリューションズは、日本政策投資銀行とメガバンク3行が出資して2010年に設立された金融機関系のPEファンドです。事業再編や再生をメインに手掛けており、2019年には私的整理の一種である事業再生ADR手続きに入った「曙ブレーキ」のスポンサーとなって200億円を投資しています。
野村キャピタル・パートナーズ
野村キャピタル・パートナーズは、野村ホールディングス株式会社の100%子会社で、2018年に設立された金融機関系PEファンドです。野村の経営資源を活用しつつ、外資系ファンドと共同で「すかいらーく」のMBOや「オリオンビール」のTOBに投資する等、国内の大規模投資案件においてそのプレゼンスを発揮しています。
商社系
丸の内キャピタル
丸の内キャピタルは、三菱商事と三菱UFJ証券(三菱UFJフィナンシャルグループの子会社で現三菱UFJ証券ホールディングス)が出資して2008年に設立された商社系PEファンドです。三菱商事と三菱UFJフィナンシャルグループの顧客基盤や経営資源を活用し、事業承継とカーブアウトを中心に手掛けています。2011年には、焼肉屋牛角等を展開するレックス・ホールディングス(現レインズインターナショナルでコロワイド傘下)より「成城石井」事業を譲受け、業績改善の上2014年にローソンに売却しています。また、債務超過に陥りかけていたクイーンズ伊勢丹の再起を図りローソンに成城石井の共同買収を持ちかけていた三越伊勢丹にも支援の手を差し伸べ、クイーンズ伊勢丹等のスーパーマーケット事業を承継した新会社「エムアイフードサービス」に投資をしています。
まとめ
各社のホームページやプレス、ニュース記事等を参考にラージキャップに分類されるPEファンドについてまとめてみました。投資先情報等については網羅できていませんが、当記事を皆さんのPEファンド情報収集に役立てていただければ幸いです。
以上です!
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