M&Aファーム(FAS)内定者の方からよく質問を受けるので、入社前に読んでおくべきオススメ書籍をまとめてみました!分厚くて読みづらいFAS内定者向けオススメ図書リストを以前見たことがありますが、個人的には入社前にそんな修行みたいなことはしなくて良いと思っています。何故なら嫌でも入社したら修行のような日々になりますし、残された学生生活や転職までの有給休暇消化期間はできるだけ好きなことに使った方が良いです。
なので、私がこれから紹介するのは比較的読みやすい書籍ばかりです!勉強熱心な方には物足りないかもしれませんが、結局実務で使用するものは読みやすい書籍だったりします。実際に紹介する書籍は私や同僚が実務を進める中でよく手に取っている書籍ですし、難解なものを入社前に読んだからと言ってパフォーマンスに大きな差が出るかというと私は疑問です。逆に私が紹介する書籍は最低限押さえておきたいレベル感のものなので、是非参考にしていただき、気になる書籍は手に取ってみてください!
FAS選考を受けられる方に向けたオススメ書籍は以下の記事でまとめておりますので、該当される方はそちらもご参照ください。
FAS入社前に読んでおきたい書籍10選
M&A実務のすべて
読みやすさ:★★☆☆☆
オススメ度:★★★★★
企業買収の実務プロセスの方が読みやすい印象ですが、私は実務においてこちらの書籍をよく参照します。M&A全体像、ストラクチャー、バリュエーション、デューディリジェンス、PMI、その他法務・税務・会計論点等、多岐に渡るトピックが本書には詰め込まれています。
もちろん本書だけで実務の全てがこなせるわけではありませんが、M&Aプロセスの中で論点となる部分はおおよそ網羅されているため、まず本書で該当箇所を確認し、その内容を足掛かりに追加リサーチをすることで論点整理に繋げられるので気に入っています。所属するサービスラインに関わらず、持っておきたい1冊です!
企業価値評価のすべて
読みやすさ:★★★☆☆
オススメ度:★★★★☆
こちらはバリュエーションの実務書です。実務書と言っても内容は基本的なもので、主にバリュエーション業務の中で使用する各アプローチ(マーケット、インカム、コストアプローチ)についてまとめられています。アプローチごとに留意点等が記載されており、ふとした拍子に浮かぶバリュエーション実務上の疑問に対する答えや考え方のヒントが記載されています。私もバリュエーション業務に従事する際は、本書を手元に置いてモデル全体が整合しているか等を該当ページにてチェックしながら進めています。
読みやすさ★3としましたが、★4以上をつけても良いほど読みやすい書籍です。★3評価とした理由は、実務に触れていないとなかなかピンと来ない部分もあるかもしれないと思ったためで、一方で、実務に入る前に本書を一読し、バリュエーション業務で遭遇する論点を頭に入れておくと余計な調べものをせずに済みます。
フィナンシャルアドバイザリー(FA)部門、バリュエーション部門の方はもちろん、レポート数値がどのようにバリュエーションにはねるのか財務デューディリジェンス(FDD)の際に把握しておく必要があるので、FDD部門の方にもオススメしたい一冊です!
バリュエーションの教科書
読みやすさ:★★★☆☆
オススメ度:★★★☆☆
実務的というよりは、「教科書」とあるように理論チックな内容が多く含まれています。しかし、内容がよく整理されており「なるほどー」となる部分もあるため、新たな気付きを得るのに有用な書籍です。オススメ度を★3としている通り、位置づけとしては他の6冊には劣後するものの、特にバリュエーションに従事する方は一度は読んでおきたい一冊です!
M&Aファイナンス
読みやすさ:★★☆☆☆
オススメ度:★★★★☆
本書は、資金調達や買収ストラクチャーについて触れられている書籍で、なかなかサラッと読める内容ではありませんが非常に勉強になります。FASが直接資金調達に関与できるわけではないものの、ストラクチャーに関するアドバイスは場合によってはスコープに含まれてくるため、買収ファイナンスを押さえておかなければ適切なアドバイスができません。そういった意味で、特にFA部門採用の方には是非一読いただきたい一冊です!
会社法のきほん
読みやすさ:★★★★☆
オススメ度:★★★★☆
ディールに関与する中で、特に対象会社が上場会社等の際、会社法はおさえておく必要があります。私は、法律は小難しくて苦手なのですが、仕事柄そうも言っていられず、簡単な書籍はないものかと色々探していたところで本書に出会いました。中身はこれで本当に大丈夫なのかと思うほどポップな感じですが、押さえるところは押さえてくれていて、それでいて読みやすいため私は大変助かっています。会社法についてサラッと触れておくのにオススメの一冊です!
財務デューデリジェンスの実務
読みやすさ:★★☆☆☆
オススメ度:★★★★☆
主にFDD部門や事業再生部門の方向けの書籍にはなりますが、FAやバリュエーション部門等、FDDレポートを読む部門の方にも是非読んでいただきたい一冊です。私は監査経験者ではないので、FDD手続きについて理解できていない部分もあり、FDD部門の方とのコミュニケーションにおいて本書には助けられています。結構ボリューミーなので、読み進めるには気合が必要ですが、実務に役立つのでサラッとでも読んでおきましょう。
オフィスで見かける財務デューデリジェンスの専門書にはDeloitteの書籍もありますが、私はこちらのPwCの書籍の方が読みやすいので好きです。
ビジネスデューデリジェンスの実務
読みやすさ:★★☆☆☆
オススメ度:★★★★☆
こちらはストラテジー部門や事業再生部門の方が主な対象になります。ただ、FDDと同様にFA部門やバリュエーション部門もビジネスデューディリジェンス(BDD)レポートを読む必要が出てくるのと、その内容をバリュエーションへ反映していく必要がありますので、上記部門採用の方には是非読んでおいていただきたい一冊です!
こちらも財務デューディリジェンスの実務と同様かなりのページ数があり圧倒されますが、コンサル出身だからということもあってか、上記よりは読みやすかったです。
事業デューデリジェンスの実務入門
読みやすさ:★★★☆☆
オススメ度:★★★★☆
事業再生部門の方向けの書籍です。本書を読むことで、事業再生におけるDDでどのような項目を確認・分析して報告書を作成するのか、というイメージを持つことが可能となります。一方で、BIG4 FASでの再生実務に即しているかというと疑問です。BIG4 FASではより深いところまで分析をし、時間をかけて内容の濃い報告書を作成している印象を持っています。あくまで再生実務のイメージを掴むための書籍という位置づけと理解しています。
実践的中小企業再生論
読みやすさ:★★☆☆☆
オススメ度:★★★★★
こちらも事業再生部門の方向けの書籍です。本書の内容は、特に再生支援協議会の枠組みの中で再生実務をおこなう際にはダイレクトに役に立つ内容だと理解しています。一方で、先に紹介した「事業デューデリジェンスの実務入門」等の事前インプットがなく読むと消化が大変な本だと思います。再生スキームの変遷や再生における実務論点に触れられているため、事業再生に従事する方は読んでおきたい一冊です。
M&Aにおける財務・税務デューデリジェンスのチェックリスト
読みやすさ:★★★☆☆
オススメ度:★★★★★
FDD部門の方に紹介いただいたFDD部門の方向けの書籍です(事業再生部門の方にも役立つと思います)。FDDの手続きの中で各勘定科目をチェックしているというのはざっくり理解しているけれど、具体的にどういう手続きを踏んでいくのだろうという疑問に答えてくれる一冊です。題名にあるようにチェックリストがついているので、監査未経験でもFDD実務におけるイメージが湧きやすい内容となっています。
FDDにおける手続きの概要を理解しておくことはディールを進める上で重要ですので、FA部門やバリュエーション部門の方もご一読することをオススメします!
まとめ
FAS入社前に読んでおきたい7冊の書籍を紹介しました。できる限り読みやすいもの、実務で活用しやすいものを中心に選びましたが、すべて読むとなるとなかなかに骨が折れます。時間的に消化が厳しいということであれば、採用された部門のものを重点的に読み、残りは実務の中で辞書的に活用する使い方でも個人的には良いと思います。
何れにせよ、当記事を参考に入社前の準備期間を有効活用いただけると幸いです。
以上です!
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