時々M&Aアドバイザリーファーム(BIG4 FAS)のバリュエーションチームに関する質問を受けます。なので、今回はFASバリュエーションチームにおける業務内容について書いてみたいと思います。
FASで扱う2種類のバリュエーション
取引目的バリュエーション
M&Aアドバイザーとしてのキャリアを積む上で皆さんがイメージされるのはこちらだと思います。いわゆるディールプロセスにおけるバリュエーションが取引目的のバリュエーションになります。
初期的な資料から、意向表明書(LOI)に記載する買収金額を試算するための簡易プライシングや、LOI締結後各種DDの内容を反映させたバリュエーションが含まれます。
会計目的バリュエーション
会計目的バリュエーションは、外からだと見えづらい部分だと思います。具体的には、取得価額の配分(PPA:Purcase Price Allocation)や減損テスト等監査業務への関与が、会計目的バリュエーションに該当します。
PPA
まずPPAについて見てみましょう。
PPAは、買収対象会社の純資産額に対し、それを上回る価格で購入した場合、のれん(広義ののれん)が生じますが、その内容を資産負債に割り当てて、間接的に狭義ののれんを算出するプロセスのことです。
割り当てると言うと分かりづらいですが、例えば有形固定資産を時価評価した場合に、その価値が簿価を上回る場合、そのステップアップ分は広義ののれんを減らす方向に作用します。有形固定資産の他に、棚卸資産等がPPAにおける論点となります。
更に、これがPPAにおける最もコアな部分ですが、無形資産を識別し、特殊なバリュエーションモデルを回して価値を算出します。識別無形資産の価値、有形資産のステップアップ/ダウン分を広義ののれんから調整し、狭義ののれんが求まります。
監査業務への関与
これは会計系ファーム特有だと思いますが、監査法人から会計目的での取得価額、PPA、減損テストの検証支援を依頼されます。監査人では評価の話は分からないので、そこは専門家(FAS)にお任せします、ということです。
あくまで監査業務としての依頼なので、監査手続きを設計し、それに従って然るべき手続きを踏み、積極保証のメモ等を監査法人向けに作成することとなります。
依頼内容は様々ですが、減損テストに関する相談が比較的多い印象を持っており、依頼時期は監査法人の繁忙期と重なる傾向にあります。
まとめ
バリュエーションやりたくて来たけれど、入社してみたら意外と会計目的バリュエーションが多くて肌に合わず、ファームを去る方もいらっしゃいます。
なので自身のキャリアの方向性も考えつつ、ミスマッチがないように情報収集されることをオススメします。
監査経験がある方は、会計目的バリュエーション業務には馴染みやすいのではないかと個人的には思います。
以上です!
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