当記事ではミドルキャップのプライベートエクイティ(PE)ファンドについて各社の概要をまとめています。ミドルキャップの定義とカオスマップの作成前提については以下の記事をご参照ください。
PEファンド:ミドルキャップ
独立系
アスパラントグループ
アスパラントグループは、2012年に政府系ファンドである産業再生機構及び企業再生支援機構(現地域経済活性化支援機構)等で役員を勤めた中村彰利氏によって設立された独立系のPEファンドです。事業承継やカーブアウト案件を中心に手掛けており、2018年にベルーナに売却した和装品の「さが美」や2019年にエア・ウォーターに売却したファインケミカル素材の「FILWEL」はカーブアウト案件であり、何れも2~3年を目途にEXITしています。
アドバンテッジ・パートナーズ
アドバンテッジパートナーズは、1992年にベイン・アンド・キャピタル出身者によって設立された独立系のPEファンドであり、丸紅と共に「ダイエー」の再生や「ポッカコーポレーション」の再生を手掛けた老舗ファンドです。再生に強みを持ちつつも事業承継やカーブアウトを中心に手掛けており、過去には「コメダ」の事業承継(2013年にEXIT)や「弥生」のカーブアウト(2004年にEXIT)に関与しています。
エンデバー・ユナイテッド
エンデバー・ユナイテッドは、スモールキャップの独立系PEファンドであるニュー・ホライズン・キャピタルの会長安東泰志氏が2002年にフェニックス・キャピタルとして設立され、2013年に分離独立した独立系PEファンドです。前身のフェニックス・キャピタルは金融機関から債権を買い取って株式化し事業再生をおこなうPEファンドであり、2004年には「三菱自動車」に約740億円出資をして再生に取り組んで有名となりました。
エンデバー・ユナイテッドは前身のフェニックス・キャピタルからの投資実績も含めると国内投資数は最大規模であり、宅配ピザの「ピザハット」等に投資しています。
キャス・キャピタル
キャス・キャピタルは2003年に設立された独立系PEファンドであり、大企業のノンコア事業のカーブアウト案件や関連会社の買収案件等をメインに手掛けています。2005年10月に大阪瓦斯等の株主からの和風レストラン「かごの屋」を展開する「キンレイ」(2012年4月にEXIT)(現KRホールディングス)の取得や2017年2月にフォトウェディングの「デコルテ」への投資をおこなっています。
クレアシオン・キャピタル
クレアシオン・キャピタルは、日本最大規模の独立系ベンチャーキャピタルである日本アジア投資の100%子会社として1991年に設立され、2011年に独立した独立系PEファンドです。主なEXIT手法としてIPOを掲げており、高級食パンで有名な「乃が美」やOCEAN TRICO等の化粧品卸売を手掛ける「Polite」等に投資しています。
ジェイ・ウィル・パートナーズ
ジェイ・ウィル・パートナーズは、日本長期信用銀行、ゴールドマン・サックス出身の佐藤雅典氏によって2003年に設立された独立系PEファンドです。地方銀行とのつながりが強く、地方の中堅中小企業の債権買取による財務リストラクチャリング等を実施し、事業再生をおこなうことを目的として投資を実行しています。同ファンドは、経営方針によりホームページ等による情報開示をおこなっておらず、外部からの実績評価に重点を置いたプロフェッショナル集団を目指しています。
J-STAR
J-STARは、独立系ミドルキャップPEファンドであるジャフコ出身者によって2006年に設立された独立系PEファンドです。事業承継や成長支援案件を中心に、10~30億円規模の投資を実行しています。2018年9月にはアパレルショップを運営する「WEGO」、2020年11月にはふきんの製造・販売を手掛ける「白雪ふきん」等に出資しています。
ジャフコグループ
ジャフコグループは、1973年に日本合同ファイナンス株式会社として設立された、東証一部に上場する日本最大規模のベンチャーキャピタルです。ベンチャー投資に限らずバイアウト投資にも積極的なファンドであり、2016年8月にデザインTシャツの「グラニフ」(2019年12月にEXIT)、2017年10月に婚活ポータルサイトを運営する「オミカレ」に対する投資等グロース投資を中心に手掛けています。
日本産業推進機構
日本産業推進機構は、米国の投資ファンドであるTPGキャピタル日本法人の元代表である津坂純氏によって2014年に設立された独立系PEファンドです。投資先と長期的なリレーションを築く目的の継続保有型投資や中部・北陸を中心とした地域活性化ファンドの運営をおこなっており、茎わかめでお馴染みの「壮関」や390円均一ショップのサンキューマートを展開する「エルソニック」に投資をしています。
日本企業成長投資
日本企業成長投資は、ベインキャピタル出身者が中心となって2017年に設立された独立系PEファンドです。企業及び事業の「成長」にフォーカスしたコンサルティング型の投資を目指すことを掲げているファンドであり、サービス産業を中心に投資を実行しています。
2019年5月には温泉リゾートホテルを運営する「湯快リゾート」に、2019年12月には「くらし安心クラシアン」のCMでお馴染みの水道屋「クラシアン」に投資しています。
雄渾キャピタル・パートナーズ
雄渾キャピタル・パートナーズは、国内独立系PEファンドヴァリアントパートナーズ元代表の櫻井歩身氏と日興プリンシパルインベストメンツ出身の阿部知樹氏によって2014年に設立された独立系PEファンドです。学習塾を運営する「湘南ゼミナール」(2020年12月にEXIT)やデジタル領域のコンサルティングを手掛ける「S-cubism」等業界を絞らず幅広く投資をおこなっています。
金融機関系
大和PIパートナーズ
大和PIパートナーズは、大和証券グループを100%株主として1998年に設立された金融機関系のPEファンドです。設立当初は金銭債権投資(債権買取等)をおこなっており、当該事業はPE投資と2本立てで継続しています。宿泊施設等の運営を受託する「エムアンドエムサービス」等の国内企業の他、ベトナムの映画館運営会社「Beta Holding JSC」等アジア企業にも投資を実施しています。
マーキュリアインベストメント
マーキュリアインベストメントは日本政策投資銀行を主要株主として2005年に設立された金融機関系PEファンドであり、東証一部に上場しています。2015年には伊藤忠商事も出資しており、主に不動産投資戦略面で協業しているようです。成長企業や分野への投資を軸とし、保険の乗合代理店業を営む「ほけんの窓口」(EXIT済)や文房具の製造販売を手掛ける「ぺんてる」(2019年5月にEXIT済)等に投資をしています。
ライジング・ジャパン・エクイティ
ライジング・ジャパン・エクイティは、SMBC日興証券、住友商事、三井住友信託銀行等の住友グループを株主として2010年に設立された金融機関系のPEファンドです。成長が期待される国内の中堅企業を中心に投資しており、人材派遣業を営む「シーケル」(2020年にEXIT)や自動車や航空機向け部品の製造販売を手掛ける「尾張精機」に投資を実行しています。
外資系
CLSAキャピタルパートナーズ
CLSAキャピタルパートナーズは、アジアを拠点とする独立系投資銀行のオルタナティブ投資部門という位置づけで1991年に香港で設立された外資系PEファンドです。日本においては、CLSAキャピタルパートナーズをアドバイザーとしてサンライズ・キャピタルという名称で2006年より投資活動をおこなっています。
「Agu」ブランドで全国に美容院を展開する「AB&Company」や総合的なコンサルティングサービスを手掛ける「ライズ・コンサルティング・グループ」等に投資しています。過去には「ベイカレント・コンサルティング」に投資し、IPOにてEXITに成功しています。
CITICキャピタル・パートナーズ
CITICキャピタル・パートナーズは、2002年に香港で設立されたオルタナティブ投資ファンド「CITICキャピタル・ホールディングス」のPE投資部門です。中国、日本、米国のそれぞれを対象としたファンドを組成し、CITICグループのアジア地域でのネットワークや経営資源を活かして投資先の企業価値最大化を支援しています。
日本においては、住友金属工業(現新日鐵住金)の子会社で高級洋食器メーカーの「鳴海製陶」(2015年1月にEXIT)のMBO案件や内装ギアポンプの製造販売会社「日本オイルポンプ」への投資を手掛けています。
事業会社系
日本成長投資アライアンス(JGIA)
日本成長投資アライアンス(JGIA)は、ラージキャップの独立系PEファンドであるユニゾン・キャピタルのパートナーを務めた立野公一氏を代表として2016年に設立された事業会社系PEファンドです。マネックスグループ、日本たばこ(JT)、博報堂が主要株主となっており、当該パートナー企業の経営資源等を活用しながら投資先の事業価値向上を図っているのが特徴です。
白物家電メーカーの「シロカ」や化粧品の製造販売を手掛ける「セフィーヌ」等に投資しています。
商社系
アイ・シグマ・キャピタル
アイ・シグマ・キャピタルは、総合商社である「丸紅」の金融事業の一端を担う目的で2000年に設立された商社系PEファンドです(丸紅による100%出資)。国内の中堅中小企業へのマジョリティ投資を原則とし、丸紅のリソースやネットワークを最大限活用した投資先の事業価値向上をおこなっています。
カットぶなしめじでお馴染みの「ミスズライフ」や京都で半導体関連事業を営む「京セミ」等に対して持続的な成長支援投資を実行しています。
まとめ
各社のホームページやプレス、ニュース記事等を参考にミドルキャップに分類されるPEファンドについてまとめてみました。投資先情報等については網羅できていませんが、当記事を皆さんのPEファンド情報収集に役立てていただければ幸いです。
以上です!
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