USCPAキャリア:FASサービスラインと科目別親和性

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BIG4 FAS入社を目指す方の中には米国公認会計士(USCPA)取得のために勉強されている方や既に合格されている方が多いと思います。

以前「USCPAキャリア:M&Aファームにおける位置づけ」というトピックで記事を書きましたが、今回はBIG4 FASの各サービスラインとUSCPAの各科目との親和性はどうなのか?という観点で書いていきます!

ご自身が目指されるFASでのキャリアに対するUSCPAの有効性や、USCPA学習における科目ごとの力の入れ具合等を把握するのに役立てていただけると幸いです。

早速ですが、以下の表をご覧ください。各ファームに存在する主要なサービスラインとUSCPA科目でマトリクスを作成し、◎○△×の4種類で評価してみました。あくまで定性的な評価になりますので、もしかすると私と異なる意見の方もいらっしゃるかもしれませんが、本記事ではこちらをベースに以降の話を進めます。

縦軸と横軸それぞれで追っていった場合に、縦軸で見るとFAR>BEC>AUD>REGの順でFASにおける有効度が高そうなことは何となく把握可能ですが、横軸では少し分析しづらいですね。なので、以下の通りスコアリングした上で分析をしてみましょう。

◎ = 3、○ = 2、△ = 1、× = 0

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FASサービスライン(部門)軸での分析

スコアリングによって横軸でのランキングも明確になったところで、FASサービスラインごとのUSCPA科目の親和性を見ていきたいと思います!

FDD

FDDはFinancial Due Diligence(財務デューディリジェンス)の略です。FDDは買収監査とも呼ばれ、監査業務との親和性が高い業務です。そのため、AUDは◎と評価しました。また、監査には財務会計の知識が必須ですので、財務会計も◎です。FDDは実態の財務諸表を作成するプロセスであり、在庫の分析など管理会計的な知識も必須になってきます。更に、運転資本やデットの分析、過年度における正常収益力分析等をすることにより後続の価値算定に貢献するプロセスになるため、バリュエーションの理解も大切です。したがって、管理会計やファイナンスを含むBECを○の評価としました。

REGについては△としています。分析対象会社の主要事業が米国で展開されている等の場合に米国の税制の影響を受けます。そうした場合にREGの知識が直接活用できるため、活用頻度は高くないものの、活用可能性があるという意味で△評価としました。

FDD部門は監査法人出身者が多い部門であり、そのことからもFDD業務は日米関わらず公認会計士という資格と親和性が高いことが理解できます。よって、上の表でのスコアリングも「9」と最も高い結果になっています。

Valuation

Valuation(バリュエーション)はディールにおける取得価格を決めるプロセスになります。価値算定のためには、財務会計・管理会計・ファイナンスの知識が必須です。また、ビジネスデューディリジェンス(BDD)の結果も適切に反映していく必要があるので、BDDにおいてどんな分析がされているかということに関するインプットも重要です。財務会計はFARで、管理会計・ファイナンス・ビジネスに関する内容はBECでカバーすることができます。したがって、FARとBECについては◎評価としました。

Valuation部門の業務は以前に以下の記事にて書いています。その記事の中で、会計目的のバリュエーションがある旨触れてます。会計目的バリュエーションを実施する際、AUDの知識が役に立つ場面が出てきます。評価周りの監査における専門家の利用という形で関与していくので、監査手続き全体から見ると非常に限定的なスコープではありますが、AUDの考え方は活きてきます。これらを鑑み、AUDは△評価としました。

REGについてはFDDと同じ観点で△評価としています。税務論点の影響を適切にバリューに反映させていく必要があるため、米国が絡むディールを扱う際にはREGの知識が活用できます。

Restructuring

Restructuring(リストラクチャリング)部門では、いわゆる事業再生に係るアドバイザリー業務を提供します。事業再生支援のフェーズは大きく2つのステップに分けることができます。1つはFDD/BDDを通しての事業計画策定支援、2つ目が事業計画に従った実行支援とモニタリングです。FASのRestructuring 部門では前者を中心に担っており、USCPAの科目としては、FDD/BDDの実施に必要なFAR、BEC、AUDを◎もしくは○評価としています。AUDの評価について、FDD部門で◎評価としているのに対してRestructuring部門 では○としている理由は、短期間でFDD/BDD/計画策定をおこなわければならない関係上、FDD部門で実施するFDDよりもライトだと考えたためです。

REGについては×としました。もしかすると分析対象会社の関係会社に米国企業が含まれる場合があるかもしれませんが、知識の使用頻度は極めて低いと認識しています。

Forensic

Forensic(フォレンジック)とは、いわゆる不正会計調査のことです。時々ニュースで不正会計が取りあげられますが、不正が発覚した際の詳細調査を担うのがM&AファームのForensic部門になります。今はどの会社も会計管理はシステムを使っておこなわれています。そうした背景もあり、Forensic部門はITに精通した人が多い部門でもあります。USCPAのBECではITに関する部分について触れられており、AUDにおいても会計システムの利用が前提で出題がされます。更にはBECの管理会計の理解、AUDで学ぶ基本的な監査の考え方はForensic業務において活用できる部分であり、双方を○の評価としています。言わずもがな、不正「会計」調査なのでFARで学ぶ内容は必須となり重要性も高いため、◎の評価としました。

REGについては、Restructuring と同じ理由で×評価としています。

FA

FA(フィナンシャル・アドバイザリー)は、M&Aプロセスにおいて買い手もしくは売り手につき、ディールにおける利害調整や相手方のアドバイザーとの交渉等をおこなう業務です。FAの大きな役割の1つに価格交渉がありますが、これにはValuationの知識が必須であり、Valuationを理解するためのファイナンス、ビジネス、管理会計等BECがカバーする知識は押さえておく必要があります。よって、BECを◎評価としました。また、会計に精通している必要は必ずしもありませんが、Valuationにおいて財務会計の知識は切り離せないため、財務会計を○としました。

REGについては米国ディールにて論点が出てきた場合には手当てする必要があるため△とし、ディールに係る会計上の整理はFAが担うものではないためAUDは×としました。

Strategy

Strategy部門では、M&A戦略や事業性評価、BDD等を担っています。これらの業務には、最低限の財務会計、管理会計、ビジネス等の知識が必要となります。一方で、AUDやREGでカバーされているような内容については不要との認識であり、知識で勝負していくというよりは、アイデアやリサーチ面でバリューを出していく業務になります。そのため、FARとBECは○、AUDとREGは×と評価しています。戦略コンサルティングファームと業務領域が被っており、戦略ファームでUSCPAが特に要求されていないことを鑑みると、FASの他部門との比較においては最もUSCPAとの親和性が低い業務と言えます。

FASサービスライン軸での分析まとめ

FDDからスコアリングの高い順に見てきましたが、多くのサービスラインでUSCPA科目の知識が活かせることがご理解いただけたのではないでしょうか。スコアが「4」と他部門と比較して低いStrategyを目指す場合はUSCPA取得の意味はないのかと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、個人的にはFARやBECがカバーしている領域のインプットは非常に有効だと思っています。なので、このスコアを理由に撤退することはしないでください!

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USCPA科目軸での分析

縦軸で見るとどうでしょうか。スコアで見るとFARが「16」と圧倒的です。BECもカバー領域の広さから「13」とハイスコアがついています。監査法人出身者のネクストキャリアという位置づけでもあるFASですが、純粋な監査業務をする環境ではないためスコア自体は「8」となっています。そしてREGが最もロースコア「3」です。米国の法律や税制に関する内容なので、REGの親和性スコアが低くなることは容易に想像がつきますよね。

ところで、私は冒頭触れた「USCPAキャリア:M&Aファームにおける位置づけ」の記事の中で、FASにおけるUSCPA科目別貢献度として以下のとおり書いています。

FAR>>>BEC>AUD>>>REG

スコアリングとこの表記って整合していないのでは?というご指摘を受けそうなので補足しておきます。上記過去記事では、その科目知識の使用頻度という観点に加え、学習した内容がそのまま実務に活きるかという即効性の観点を入れて評価しています。例えば、FARとBECの間に大きな隔たりがありますが、FARは比較的吸収した知識を実務でそのまま利用することができる一方で、BECのファイナンス(特に価値評価の部分)についてはサラッとした内容で実務との乖離が激しく、BECの知識だけで実務を乗り切るのは不可能です。このように、評価のビューに違いがあるため、スコアリングと整合しない結果となっています。

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まとめ

結論として、FASの各サービスラインとUSCPAの親和性は高いと言えると思います。したがって、USCPAの全科目合格を目指す目指さないに関わらずFAS入社を希望する方にとって、USCPAをベースに知識を身につけていくことは非常に良い選択だと言えます。

本記事の内容が、皆さんのキャリア実現にプラスになれば幸いです。

以上です!

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