当記事は以下の記事で紹介している「議事録作成のコツ」の具体例です。当記事のみを読んでいただいても構いませんが、以下の記事も参考にしていただくとより理解が深まると思いますので是非読んでみてください。
以下で紹介している具体例はせいぜい2~3分程度の会話ですが、実務的な場面での会議の様子を紹介しています。会議のトピックとしてはあえて多くの方が理解しづらいと思われるPPA(Purchase Price Allocation: 取得価額の配分)を選択しました。会話の内容自体は専門知識がなくとも楽しめるようにしておりますので、読み進めていただけると幸いです。
かなりリアルな内容にしていますが、以下の例に示す案件、会社、登場人物はすべて架空であり、実際にあった議論を再現したものではございません。
議事録作成の具体例
20XX年、A社がある会社を買収しました。A社経理部のネコ部長は、この買収に関するPPAの手続きをM&AアドバイザリーファームであるXYZ FASに依頼。PPAのキックオフという形でXYZ FASの牛、リス、みやびがA社を訪問し、ミーティングをおこないました。その様子を以下で紹介しています。
PPAに関する会議の一部

ネコ部長
いやー、今回投資差額が大きいじゃないですか。最近ほら、コロナとかもあって取引先が動けないとか色々ありましてね、うちも前期からPLが微妙なんですよ。ここに来てこのディールでしょ。なんでね、無形資産を非償却で整理するか、のれんに寄せたいと思ってましてね。その辺りお聞かせ願えませんか。

シニア リス
今回のディールでは顧客関連資産が識別評価対象となろうかと思っております。一応ベンチマーク分析もしてみたんですが、投資差額の、、、、えーっと対象会社が属する業界では投資差額の60%以上が顧客の価値となっておりまして、監査人からの指摘の可能性を考えても、、、

ネコ部長
あのね、その辺うまく考えるのがお宅らの仕事でしょ?何のためにアドバイザーとして起用されてるのか分かってます?

パートナー 牛
あのですねー、その辺は精一杯やらせていただきます。大変失礼いたしました。えーと話を戻しますとー、今リスが申しあげた通りですね、今回のお取引に関しては御社は顧客を買いに行かれたのかなというところで、えー、理解しております。

ネコ部長
まあそうですね、顧客との関係がメインアセットってのはそうなんで超過なんちゃらでしたっけ?で評価することになるんでしょうね。前にやったことあるんですよ。その時のアドバイザーは上手く整理してくれましてねー。あ、前職の話なんですけどね。

パートナー 牛
ええ、さすがよくご存知でいらっしゃいます。今回ですねー、余地としましてシナジー、、、もとい、顧客関連資産の評価に使うトップラインをもう少し整理できるかなと思っておりましてー、えー、あっ、何かって言いますとー、売りのシナジー部分を買い手固有のシナジーとジェネラルシナジーに分けましてー、、、あとー、そうですね、販管費の中に新規顧客獲得費用が含まれていないかももう少し精査させてもらいたいなーと思っております。インパクトとしては大きくないんですけれども、そのあたり丁寧にやらせてもらえないかなーとお話伺いながら思った次第です。
議事録担当みやび作成のメモ
議事録担当のみやびが書いたメモは次の通りです。

みやび
細かいことを書いていくとキリがないため、ネコ部長のご意向やXYZ FASの宿題となり得る必要最低限の情報(要点)のみをメモに落としています。冒頭紹介した記事「議論を抽象化して理解する」のパートでも触れましたが大きな方向性を把握して文字に落としておくことが重要です!
完成した議事録の文章
メモの内容をもとに、情報を補足して作成した議事録が以下です。
(本文敬称略)
A社ネコ:本件ディールは投資差額が大きいため、識別対象無形資産を非償却で整理、もしくは投資差額に占めるのれんの割合を大きくしたい(A社はIFRS適用会社であるためのれん非償却。PLインパクトを抑えたい意向と推察)。ディールの目的は顧客関係の獲得であり、それがメインアセットであると認識している。
XYZ社牛:ベンチマーク分析や取引の実態に基づき、XYZ FASも顧客関連資産がメインの識別評価対象無形資産であると理解している。本件ディールのトップラインには買い手固有のシナジーが含まれていると認識しており、これを取り除くことによって無形資産の評価額を下げることができないか検討したい。また、販管費に新規顧客獲得費用が無いか改めて確認させてもらいたい。(TODO:12/20日目途に精査)
まとめ
当記事の具体例、楽しく読んでいただけましたでしょうか?また、議事録作成のイメージは湧きましたでしょうか?当記事で紹介したのはあくまで一例ですが、参考になれば幸いです!
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