M&Aメモ:シャトレーゼによる亀屋万年堂買収

FAS実務

2021年1月25日、シャトレーゼホールディングスによる亀屋万年堂と製造会社である亀屋万年堂製菓の100%株式取得が発表されました。

シャトレーゼは説明せずとも皆さんご存知、洋菓子をメインとしたスイーツを取り扱うお菓子メーカーです。安価で美味しいスイーツが食べれるため私も大好きで、時々親に頼んで地元の店舗に連れて行ってもらっていました。

亀屋万年堂は、ブッセの一種であるナボナをヒット商品として持つ老舗のお菓子メーカーです。社名は和菓子店のようにも思えますが、ホームページで扱っている商品を拝見すると、どちらかと言うと洋菓子寄りなのかな?という印象を受けました。私は店舗に足を運んだ記憶はないのですが、お土産としていただいて食べたことがあるような気がしています。

想定されるシナジー/超過収益

本件ディールは、ストラテジックバイヤーによる完全子会社なので、一定のシナジーが見込まれての買収と思われます。残念ながら買い手も売り手も非上場であり、開示されている財務データ等も十分ではない上買収金額も非公開なので、どのくらい投資差額が発生したのか全く把握できません。

ただ、どんなシナジーや超過収益があるだろうと考えた時に、それほど深く考えずとも挙げることができます。想定されるシナジーや超過収益については以下で書いていきますが、これらを考慮すると、亀屋万年堂の貸借対照表上の純資産額よりも一定額積んだ形で株式価値を見ているのでないかと考えられます。

ストラテジックバイヤー:自社の事業戦略において必要な会社を買収する事業会社

ブランド

今回シャトレーゼホールディングスは、亀屋万年堂の「ブランド」に価値を見出して買いに行ったということは容易に想像できるかと思います。BtoCのビジネスがメインということもあり、ナボナという特定製品のイメージもあり、ブランドが収益の源泉であることは明らかです。

亀屋万年堂の販路活用という記事もありましたが、BtoBのビジネスではないため、顧客資産の獲得という色は薄いと思われます。また、技術の観点から見ても、お菓子の製造技術に革新が起こるとは考えづらく、亀屋万年堂の製品にそのような特殊技術が必要なものがあるかというと、ない気がします。

ですので、収益の源泉はブランドであり、のれんが発生していればそのうち一定割合はブランドが占めるものと考えることができます。逆にそのブランドの価値分は、調整後純資産額に積み増されるべき価値と見ることができます。

原料調達・製造プロセスに係るコストシナジー

シャトレーゼと亀屋万年堂の事業概要については上で触れました。亀屋万年堂の看板商品ナボナについて補足しておくと、ナボナは、どら焼きの皮を洋風にしたらどうかというところから生まれた商品なんだそうです。どら焼きと見た目の印象は随分異なりますが、亀屋万年堂のホームページを見ているとどら焼きの取扱いもあり、なるほどどら焼きと関連が深そうです。

一方洋菓子メーカーのイメージが強いシャトレーゼですが、実は和菓子も扱っていて、その中にどら焼きもあるんですよね。

つまり、原料だったり製造プロセスだったりといった部分でのコスト削減に寄与するシナジーは一定額見込めそうだということです。どら焼きを取り上げましたが、それ以外の商品の製造プロセスにおいても共通化可能な部分があると想定され、それらもコストシナジーとして買収金額に反映され得るものと考えられます。

製品の販売に係るシナジー

亀屋万年堂は関東で集中的に事業を営んでおり、店舗数は多くないものの、シャトレーゼの店舗が近辺にない地域に保有店舗があれば、販路として活用が可能です。逆に、例えばナボナがシャトレーゼの店舗に置かれることが想定されている場合には、シャトレーゼが亀屋万年堂の販路を活用する場合と比較すると、かなりの収益インパクトとなるのではないでしょうか。このシナジーについても買収金額に反映され得る項目であり、金額算定アプローチがインカムアプローチでかつ事業計画に当該シナジーが織り込まれていれば、買収金額に一定額反映されていると考えることができます。

まとめ

いかがでしたか?数字が無い中での分析でしたが、こんな風にディールを見ていくとちょっと楽しいですよね!皆さんも是非興味のあるディールがあれば分析をしてみてください。

以上です!

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